後発薬、難路の創薬に挑む(2018/9/17)


市場頭打ちに危機感

後発薬メーカーが新薬開発に乗り出している。日本ケミファは新薬候補を製薬大手に譲渡する交渉を進めており、将来的に特許収入を得る。富士製薬工業は新薬候補の臨床試験を始めた。安価な後発薬は普及が進むが、2020年にも市場は頭打ちになる見通し。新薬開発の成功率は低いが、転機を迎える後発薬市場への危機感が各社の背中を押す。

 

日本ケミファや富士製薬

後発薬メーカーは特許が切れた薬を独自のノウハウで安価に製造販売する。医薬品の原価は大半を研究開発費が占めるが、それがいらない後発品は安価に提供できる強みがある。

だが、20年にかけて後発薬を取り巻く環境は変わる可能性が高まっている。政府は後発薬の利用促進に力を入れるが近年、後発薬使用率の伸びは鈍化気味だ。

18年2月の使用率は72.5%に達し、政府目標の80%に近づく20年以降は「伸び悩む」(後発薬大手)との見方が多い。「80%を達成すれば、使用促進策は打ち切りになる」(同)との声もある。

こうした動きを横目に各社は新薬開発に取り組む。日本ケミファは、自社で発見しあ新薬候補について今春、動物実験を完了した。臨床試験の開始にめどが立ったが、今後、自社で試験するが、製薬大手に権利を販売するか見極める。製薬業界では譲渡後も特許使用料が入る。既に大手と交渉を始めた。

対象の薬は、うつ病や不安神経症に新しい利き方を示す「オピオイド・デルタ受容体作動薬」で、既存役を上回る効果や安全性が期待される。同社は合計4つの化合物を研究中で、うち3つを20年度までに他社に供与する目標を掲げている。

富士製薬工業は、新規の女性ホルモン薬「エステトロール」の臨床試験を始めた。月経困難症に加え、更年期障害でも近く治験を開始する。東南アジアでは20年までに、米国の臨床試験データを使って経口避妊薬として承認申請する。

エステトロールはベルギーのミトラ社(リエージュ州)から権利を導入したもので、従来の女性ホルモン薬よりも血栓などの副作用が少ないと期待されている。

大原薬品工業(滋賀県甲賀市)は5月、創薬スタートアップのプリズムファーマ(横浜市)から、新規の肝硬変治療薬の国内開発販売権を取得した。20年にも中期知見を開始する方針だ。

後発薬メーカーが新薬開発に乗り出すケースは海外でも出始めている。世界2位のテバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ(イスラエル)は後退医薬品など複数の新薬を開発中。5位のサンファーマ(インド)も今月、ドライアイを治療する新薬を米国で承認取得した。

各社は創薬に臨む者のリスクは大きい。新薬のもととなる化合物の探索段階で将来、収益化できる施工確率は3万分の1、臨床試験段階での成功確率は10~15%に過ぎない。

武田薬品工業など資金力のある「メガファーマ」ですら創薬に苦心する。開発費も年々高騰するなか、同業他社を巨額買収し「時間を買う」戦略に走るメーカーも多い。足元では5割近くの新薬候補が創薬スタートアップ企業や大学との共同研究で生まれている。後発薬メーカーが創薬に失敗すれば競合他社と手を組むなど業界再編につながる可能性もある。

 

薬価引き下げ 足かせ
特許切れ 先発薬と価格差縮む

日本の医薬品市場は10兆円(薬価ベース)規模。うち後発薬市場は1割強を占め、年率10%前後で成長してきた。政府の医療費抑制を背景に、特許が切れた薬を安価に製造する技術を背景に、製造する技術を持つ高春薬メーカーは業績を拡大、存在感を増している。

だが、ここにきて後発薬の使用率が7割を超え、政府による後発薬の利用促進策もいつまで続くか不透明感が漂う。

もう一つ足かせになりそうなのが、薬価引き下げだ。4月の薬価制度改革で引き下げ幅は7.48%。過去10年間の改定幅は毎回5%程度だった。特許が切れた先発薬も引き下げられている。この結果、先発薬も引き下げられている。

この結果、先発薬メーカーが売り出す医薬品と後発医薬品との価格差は縮小しており、今後、最短6年で先発薬の価格が後発薬と同水準になるケースも出る見込み。価格差で勝負してきた後発薬メーカーはダメージを受けやすい。

東和薬品など後発薬大手3社の19年3月期の業績は減速する見通し。東和製薬の売上高は970億円と4%増えそうだが、連結営業利益は97億円と17%減る見通し。日医工も売上高は4%増だが、連結営業利益うが22%減の80億円となるなど薬価改定の影響を受ける。

 

後発薬各社の主な新薬候補

対象疾患 段階
日本ケミファ 痛風・高尿酸血症 初期治験(第1相)終了
神経障害性疼痛
うつ・不安症 動物実験終了
富士製薬工業 月経困難症 中期治験(第2相)実施中
更年期障害 初期治験(第1相)準備中
大原薬品工業 急性リンパ性白血病など 中期治験(第2相)実施中
神経芽腫

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