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経済の語源は「経世済民」
経済というと何をイメージしますか?
「経済」という言葉は、明治以降に日本で生まれた、つくられた言葉です。明治維新で日本が鎖国を解くと、海外からいろいろな言葉が入ってきましたが、「エコノミー」という言葉もこのときに入ってきて、これを何と訳そうかといろいろ考えた結果、中国に「経世済民」というがあり、じゃあこれを使おうということになりました。
「経」というのは治めるという意味です。経世というのは「世を治める」の意味です。そして「済民」は「民を救う」という意味です。世を治め民を救う、この4文字の言葉から「エコノミー」は経済と訳したらどうかという話になり、これがそのまま経済という言葉として定着しました。
経=治める
世=世の中
済=救う
民=人民
何を選択し、何を捨てるのか。それが経済学
経済というのは、あらゆる私たちの生活と関係しています。普段の生活の中で無意識に行なっている経済活動を科学的に分析していこうと生まれたのが「経済学」という学問です。
経済学と聞くと、金儲けのための学問というイメージを持っている人も少なくないのではないでしょうか。しかし、経済学というのは金儲けのための学問ではないんです。何かと言いますと、資源の最適配分を考える学問なのです。
あらゆる資源は必ず限られている、有限であるという「資源の稀少性」という考え方があります。どういうことか。たとえば天然資源であれば、石油であろうと天然ガスであろうと、みんな限られています。その限られている資源をどのように有効に使えば、私たちの暮らしが少しでもよくなるんだろうか。それを考えるのが経済学です。選択の学問と言っていいでしょう。
もう40年以上前になりますが、その頃の日本では「マルクス経済学」と、それに対抗する「近代経済学」がありましたが、社会主義がどうもだめだとなってから、多くの大学は近代経済学の方を教える先生ばかりになりました。現在、近代経済学は「マクロ経済」と「ミクロ経済」という大雑把にこの2つに分けられています。
資源の稀少性:
人間には無限の欲望があるのに対し、その欲望を満たすための資源は限られていること。
機会費用とは?
使える時間は1日24時間しかありません。24時間のうち、12時間寝るのか、8時間なのか、6時間なのか。残りの時間は勉強するのか、アルバイトをするのか、デートをするのか。これもみんな1つひとつを選択することになります。私たちはいつも、すべてのことを無意識に選択して暮らしているのです。
もっと大きな話で言えば、地面から鉄鉱石を掘り出し、それを石炭で燃やして溶かして鉄をつくる。その鉄でマンションの鉄骨をつくろうか、あるいは運搬船をつくろうか、自動車をつくろうか、それとも農業用のトラクターをつくろうか。このように、限られた資源を何に使うのかということによって、世の中は大きく動いていくわけです。まさにこれは選択するということです。
そして、何かを選択しているということは、それ以外のことを捨てていることになります。何かを選択してということは、その代わりに何かを捨てているのです。別の貴重なチャンス、すなわち「機会」を捨てている、その費用を払っている、こういう考え方もできるのです。その捨てているもの、これを「機会費用」と言います。
機会費用:
選択によって失う機会のこと。
マクロ経済=大きな経済のメカニズム
ミクロ経済=家計や企業がどんな行動をとるか
なぜ高級ホテルのコーヒーは高いのか?
このようにいろいろなものを選んでいく、それでいろいろな商品を買う。そして商品を買うことによって、商品の値段がついていきます。
「需要と供給によってモノの値段が決まる」ということは、聞いたことがありますよね。経済学には、需要曲線と供給曲線のグラフがあります。経済学というのは、とりあえずこのグラフの読み方、この概念を頭に入れれば、それでいいようなものです。
では、ここで問題を出します。高級ホテルの喫茶コーナーに行ってコーヒーを注文すると、1杯1000円以上します。ドトールコーヒーだったら200円くらいで飲めるのに、何で帝国ホテルだったりホテルオークラだったりすると1000円以上もするのか。
高級ホテルは都心の一等地にあって、土地代などのコストが高いからその値段なのだろうと考える人がよくいますが、高級ホテルから一歩外に出てみるとドトールやスターバックスがあったりします。同じ一等地でも、そこでは安い値段で売っている。たしかに地価も高いだろうけど、それがコストを引き上げていることにはなりません。
では、なぜ高いのか?高級ホテルの喫茶で雰囲気を楽しみながらコーヒーを飲む、その雰囲気を楽しむためであれば、高いお金を出してもかまわないという人が大勢いるから高い値段で成り立っているんです。需要と供給の話で言えば、高い値段でもそこで飲む人がいるから、高いコーヒーが供給されているということです。このように、モノの値段は、需要と供給でもっぱら決まります。
GDP(国内総生産)って何?
景気を具体的に見るために「景気動向指数」と「経済成長率」があります。GDPという言葉はよく聞きますよね。日本は2010年に中国にGDPで抜かれてしまって、大きなニュースになりました。経済成長率とは、GDPの伸び率のことです。
では、GDPはどうやって計算するのか。これは付加価値を合計して計算します。たとえば自動車を生産するとします。まず製鉄所が鉄をつくる材料を60万円で買いました。それを自動車用の鉄に加工しました。それをメーカーに100万円で売ります。製鉄所は40万円の新しい価値をつけたことになります。これが付加価値です。そしてメーカーはこの100万円の原材料を組み立てて150万円の自動車にして、ディーラーに売ります。メーカーは50万円の付加価値をつけました。今度はディーラーが150万円で仕入れたものを、売りこんだりあるいは自動車展示場をつくってりして、お客さんに200万円で売る。ディーラーは新たに50万円の価値をつけたということになります。この付加価値を合計したものがGDP、その国の富ということになります。
経済が成長しても景気が悪い?
経済成長率は、前年に比べて今年のGDPがどれくらい増えたのかを見るものです。これは急激に経済が成長する開発途上国と、日本のようにある程度成熟した国では、ずいぶん数字が違います。国が小さくて伸び盛りのときには経済成長率は非常に高くなりますが、日本のようにGDPがある程度大きくなってからは、経済成長率は徐々に落ちていきます。前の年に比べてGDPが落ちたとき、つまり経済成長率がマイナスになったときは、とても景気が悪い状態です。
前の年より経済が成長していても、景気が悪いと言われることがあります。国の経済に潜在的にどのくらいの成長率があるのかを見るものに、潜在成長率というものがあります。前年より経済成長をしていても、潜在成長率に達していないときは景気が悪いという考え方をします。
しかし、本当にこれだけでその国の豊かさがわかるのか、実はいろいろと問題があるわけです。人間の本当の幸せって人によって違います。お金がなくても幸せだという人はいくらでもいます。豊かさとは非常に抽象的であり、幸せというものを測ることはなかなかできない。でも、貧しいよりは豊かな方がきっと幸せな人の比率は高いだろうということで、便宜的にGDPを豊かさの指標として使っているんです。
潜在成長率:
企業が持っている労働力や設備をフル稼動させて達成できる経済成長率のこと。
COLUMN① 景気が悪いと紳士服は売れない?
景気が悪くなると真っ先に売れなくなるのは、お父さんの紳士用スーツです。お母さんに「お父さん、給料減ったんでしょう?」なんて言われて、スーツの新調を我慢させられたりします。反対に、景気が悪くなっても子供服などの売り上げはあまり落ちません。みんな我が子はカワイイですから、子供の出費の節約はしないのでしょう。逆を言えば、子供服が売れなくなったら不況は深刻だということになります。
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